大きな大会や遠征に備えるメンタルトレーニング⑤ ~同じ部屋に閉じ込められ続けると~

東京オリンピック開幕まで残り1週間を切りました。
各地で無観客による開催が発表されており、新型コロナウィルスの感染拡大予防の観点からは仕方ない措置とはいえ、やはりこの日のために頑張ってきた選手やご家族の方の無念を思うと残念でなりません。

 

各国からも選手団が続々と入国していますが、こちらも基本的にホテル(選手村)と試合会場や練習場の往復だけしか許されないそうです。
今回は多少なりとも移動や場所の変化があるため、大丈夫だとは思いますが、ふと「拘禁反応」というキーワードが頭をよぎりました。

 

拘禁反応とは、心理学や精神医学の用語で、そもそもは刑務所や軍隊などの収容施設に入れられた方に見られる症状です。
代表的な症状として、以下のようなものが挙げられます。

 

〇身体的愁訴
具合が悪いと頻繁に訴える。具合が悪い気がずっとしている。

〇不眠

〇不安

〇焦燥感

〇怒り

〇無月経・月経不順

〇的外れな応答(ガンゼル症候群)

 

長期間同じ施設の中で閉じ込められた状態を継続すると、精神的に不安定になり、そこから身体異常や具合が悪いような気がする状態になり、ひどい場合は生理に影響が出たり、会話の応答がおぼつかなくなる。簡単に説明すると、このような症状がでます。

 

不思議なことに、軍隊や刑務所、あるいは精神科病院や学校などの寮生活や企業の宿泊研修など、色々な場面でこの拘禁反応は見られやすいものですが、その割にはさして注目度が高くないような気がします。

 

予防策としては、以下のようなものはいかがでしょうか。

〇できるだけ人と話す時間を持つ。

〇生活の規則正しさを守る。

〇運動する時間、歩ける時間の確保。

〇自分で自由に決められるものがあること(食事やテレビ、入浴時間など)

 

今回のオリンピックでも、各国の選手には非常に不自由な思いをさせることになります。
近所のコンビニにも自由に行けない環境で、一番心配なのは「自分で好きにできない」というストレスの強さです。

食べたいアイスが近所のコンビニにあって、それを誰かが買ってきてくれることはできるでしょう。
そうではなくて、自分で自由にコンビニに行き、自分で好きに店内を物色し、たくさんある種類のアイスを眺め、その中から「どれがいいかな」と選べる自由。それを自分で食べられる自由。こういうささやかな自由の制約が、じわりじわりとその人を追い込みます。

 

合宿でも遠征でも同じです。
少しでも自由に動き、自由に選び、自由に決められる時間を選手の皆さんに確保できるよう祈っています。

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