日本でも音楽療法という名前や、音楽療法士という資格などが存在していますが、一般の方が想像する「音楽療法」と専門家のそれは、だいぶ違うものかもしれません。

一般の方が想像する音楽療法は、好きな音楽を聴いて、自分ひとりだけでゆったりとリラックスする・・・そんな感じでしょうか。
(もちろんそれが不正解というわけではありません)

 

実際に私が目にした範囲の(限定的な)音楽療法では、音楽に合わせて歌ったり、演奏をしたり、一緒に体を動かしたり(ダンスとは違います)。
思っていた以上に、積極的に関わっていくタイプの心理療法に感じました。
それゆえに、イメージと違ってがっかりされる方や、恥ずかしくて参加できないと余計緊張されてしまう方もいらっしゃいました。

 

さて、本題にもどりましょう。音楽をスポーツや武道にどのように活用していくかです。
メンタルトレーニングとして考えた場合、以下のような提案はいかがでしょうか。

 

①気持ちを高揚させたいとき、リラックスさせたいときに、自分の音楽を聴く。
人それぞれ、この曲を聴くと気分が盛り上がって元気になる!戦闘的な気持ちになる!という曲と、
この曲はリラックスする、集中できる、という曲があるかと思います。
戦闘的な気分になりたいときにいつも聞く曲、落ち着きたいときに聞く曲が、もう決まっている人はそれを使います。
まだ見つからないという方は、そうした曲を聴きながら高揚したり落ち着いたりの練習を繰り返し、体に染み込ませてしまいましょう。
こうして「その曲を聴くと体がこう反応する」が固定されてくるほど、実際の場面でも使いやすくなります。

 

②1/f ゆらぎの曲はリラックスによいと実証されている。
音楽アプリでもユーチューブでも結構ですが、1秒間に1拍というこのゆったりとしたリズムは、人間の心身をリラックスさせる効用があります。
これを利用して、試合前のリラックスや集中に使うのもよいかもしれません。
繰り返しますが、「普段から練習しておく」ことが大切です。試合当日に、いきなり聞いても大した効果は望めないでしょう。
音楽を聴いてリラックスする、高揚させる。それを体と心に教え込むのも、またトレーニングなのです。

 

③勝利をイメージさせる曲を重点的に選ぶ。
アクション映画のテーマ曲や、運動会で定番の曲など、誰もが「これを聴くと気持ちが高ぶる」曲を経験したことがあるかと思います。
②とは反対に、そうした曲を見つけておいて、日ごろからの練習とセットにしておくとよいでしょう。
たとえば練習前や試合前は、常に高ぶる曲を聴く。前日の夜や、試合後は、落ち着く曲を聴く、といった具合です。

 

特に武道においては、危険が伴う動きが多いこと、日常生活では経験することのない「攻撃する」「攻撃される」時間が続きます。
私も初めて格闘技の練習をしたとき、気持ちが興奮しすぎて夜になっても寝付けなかったのを覚えています。
このように、競技や練習が終わったあとも、人の精神状態は高ぶったままということがあります。
これは、気を付けないと大きなケガや事件の原因になりますので、会場や練習場を出る前に、必ずクールダウンしましょう。
気持ちをしっかりと落ち着けて、日常生活の中に戻れるようにします。

武道の場合、始まる前と後に行う「黙想」などは、まさにその役目を果たす時間かもしれません。
ただ目を閉じているのではなく、日常生活と武道の時間をしっかりと切り分ける気持ちの切り替えの時間として大切でしょう。
ぜひ、他の競技の方にも、なんらかの形で応用して取り入れてもらえればと思います。